物覚えが悪くなった50代へ。『脳を鍛えるには運動しかない!』で分かった、机より先に走る理由

人の名前が、すぐに出てこない。
さっき読んだ資料の中身が、もう思い出せない。
パソコンに向かっても、集中が30分ともたない。
50代になって「物覚えが悪くなった」と感じる場面は、少しずつ増えていきます。
そんなとき、多くの人は机に向かったまま、もっと頑張ろうとします。
でも、ジョン J. レイティの『脳を鍛えるには運動しかない!』は、まったく逆の答えを出しています。
机で悩む前に、まず体を動かす。
脳を変える近道は、そこにあるという本です。
自分は54歳です。
40代前半にマラソンを始めて、大阪マラソンと那覇マラソンを3大会ずつ完走しました。
いまはランニングとロードバイクの両方を続けています。
この記事では、本書の考え方と、走る側から見た使い方をまとめます。
この記事で分かること
物覚えが悪くなったと感じたとき、なぜ運動なのか
ランニングとロードバイク、脳への効き方の違い
50代が無理なく始める4週間の流れ
Audible版で、どの章から聴けばいいか
今日は、頭の調子を運動で整える話です。
一緒に見ていきましょう。
結論:物覚えが悪くなったら、机より先に体を動かす
本書の言いたいことを一言でまとめると、「運動は、脳が学ぶための準備を整える」です。
体を動かして心拍数が上がると、脳の中で神経細胞を育てる物質が増えます。
気分を整える物質も出ます。
その結果、覚えたり考えたりしやすい状態ができあがります。
ここで大事なのは、運動そのものが何かを覚えてくれるわけではない、という点です。
運動は土台を整える役で、覚えるのはそのあとの自分です。
物覚えが悪くなったと感じたら、走ってから学ぶ。
この順番が、本書から持ち帰れるいちばん実用的な答えだと思います。
この記事の結論
覚えが悪いと感じた日は、20〜30分、少し息が上がる強さで体を動かす。
終わったら、覚えたいことに10分だけ取り組む。
ランニングでもロードバイクでも、続けられる方でいい。
『脳を鍛えるには運動しかない!』はどんな本か
著者のジョン J. レイティは、ハーバード大学医学部で精神医学を教えてきた医師です。
共著者はジャーナリストのエリック・ヘイガーマン、翻訳は野中香方子さん。
日本語版はNHK出版から2009年に出ています。
本書は、アメリカのある高校の話から始まります。
授業の前に、生徒が心拍計をつけて走る体育を取り入れた学校です。
速さを競うのではなく、自分の心拍数を上げることを目標にした授業でした。
そこから、学習、ストレス、不安、うつ、加齢と、テーマごとに運動と脳の関係を追っていきます。
全10章で、各章の終わりには「こんな運動をしよう」という実践の節が置かれています。
研究の紹介が中心なので、読みやすい自己啓発書というより、しっかりした解説書です。
単行本で360ページあります。
そのぶん、Audible版で聴く選択肢があるのは助かります。
物覚えが悪くなった人に、本書が教えてくれる3つのこと
ここからは、本書の内容を自分の言葉で3つにまとめます。
本の文章の引き写しではなく、筆者の読み方です。
1. 運動は、脳の「肥料」を増やす
本書の中心にあるのが、BDNF(脳由来神経栄養因子)という物質です。
神経細胞の成長を助け、細胞どうしのつながりを強くする働きがあります。
著者はこれを、脳にまく肥料のようなものだと説明しています。
有酸素運動をすると、このBDNFが増える。
つまり、走ることは脳の畑を耕すことに近い。
50代にとって、いちばん希望の持てる話がここです。
2. 運動は、気分の土台を整える
運動をすると、セロトニン、ノルアドレナリン、ドーパミンといった物質も動きます。
どれも、気分、やる気、集中に関わる物質です。
本書では、ストレス、不安、うつの章で、この働きを詳しく扱っています。
ストレスが溜まっているときは、何を読んでも頭に入りません。
その状態で机にしがみつくより、先に気分の土台を整えたほうが早い。
これが本書の立場です。
3. 動いたあとに学ぶと、覚える準備ができている
3つ目が、いちばん見落とされやすい点です。
運動で整うのは、あくまで「覚えやすい状態」です。
そのあとに何もしなければ、何も残りません。
本書が紹介する研究や実践も、運動と学びを組み合わせたものが中心です。
走っただけで英単語が覚えられるなら、マラソン大会のあとは全員バイリンガルです。
ランニングは、脳の土台を底上げする運動
自分がマラソンを始めたのは40代前半です。
大阪マラソンは3大会、那覇マラソンも3大会を完走しました。
自己ベストは3時間52分です。
本書を読んで、走っていた時期の感覚に説明がついた気がしました。
ランニングは、心拍数をいちばん手軽に上げられる運動です。
靴1足あれば、家の前からすぐに始められます。
BDNFやセロトニンを出して脳のベースを底上げする、いわば料理の下ごしらえのような運動だと思っています。
時間も長くなくていい。
20〜30分、少し息が上がるくらいの強さで十分です。
フルマラソンを目指す必要はまったくありません。
ちなみに一番しんどいのは、走ることより、玄関で靴を履くまでです。
ロードバイクは、走りながら頭も使う「動く脳トレ」
マラソンのあとは空手を続け、2020年からロードバイクに乗り始めました。
富士ヒルクライムにも2回出ています。
目標のブロンズには届かず、完走止まりでした。
それでも今も、50km、60km、70kmと走り、山にも登っています。
ロードバイクは、有酸素運動であることに加えて、頭を休ませてくれません。
速さを感じながら、路面、信号、車、風を読み続ける。
体のバランスを取り、ギアとブレーキを操作する。
本書は、技術や判断が要る運動を有酸素運動に組み合わせると、脳の別の場所にも働きかけると述べています。
自分はこれを、前頭葉や小脳を使いながら走る「動く脳トレ」だと受け取っています。
ただし、ここは筆者の読み方です。
ロードバイクそのものを調べた研究が本書にあるわけではありません。
「技術が要る運動」という本書の考え方に、自分の体験を重ねた解釈として読んでください。
| 比べる点 | ランニング | ロードバイク |
|---|---|---|
| 始めやすさ | 靴1足で、すぐ始められる | 自転車と装備がいる |
| 脳への効き方 | 心拍数を上げて、土台を底上げする | 有酸素運動に、判断とバランスが加わる |
| 向いている時間 | 朝や仕事前の20〜30分 | 休日にまとまった時間 |
| ひざや腰への負担 | 着地の衝撃がある | 衝撃は小さいが、転倒に注意 |
走らなかった半年と、再開したいま
自分にも、運動から離れていた時期があります。
農園で働いていたころ、半年以上ロードバイクに乗りませんでした。
休みが少なく、父との別れ、転職活動、収入の激減が重なった時期です。
その間、何をするにも意欲が湧きませんでした。
運動をやめたから意欲が落ちた、とは言い切れません。
いろいろなことが同時に起きていたからです。
ただ、いまは会社で働きながら、ランニングとロードバイクを再開しています。
そして、このブログを一から作り直すところまで来ました。
もうひとつ思い出すのが、管理職から降格された時期です。
職場で居場所がなくなったとき、ストレスを外に出してくれたのは、ランニングと空手でした。
そのあと転職して環境を変え、また結果を出せるところまで戻りました。
走ったから結果が出た、と言うつもりはありません。
ただ、走れていた時期のほうが、次の一歩を考えられていたのは確かです。
物覚えが悪くなった50代が、明日から始める4週間
ここからは、本書の考え方を50代向けの始め方に落とし込みます。
本書の処方をそのまま写したものではなく、久しぶりに体を動かす人向けに筆者が組んだ流れです。
1週目:まずは歩く
いきなり走ると、ひざや腰を痛めます。
1週目は20分、少し早足で歩くだけで十分です。
歩く時間を決めて、カレンダーに書いておきます。
2週目:早歩きに、短いジョグを混ぜる
電柱1本ぶんだけ走って、また歩く。
これを何回か繰り返します。
息が少し上がる感覚をつかむのが、この週の目的です。
3週目:20〜30分、走るかこぐ
強さの目安は「会話はできるが、歌は歌えない」くらいです。
ランニングでもロードバイクでも、家にある自転車でも構いません。
続けられる方を選びます。
4週目から:運動のあとに10分だけ学ぶ
ここがいちばん大事です。
運動から戻ったら、覚えたいことに10分だけ取り組みます。
資格の単語でも、仕事の資料でも、本の1章でも構いません。
次の日に1回だけ思い出してみると、残り方の違いが分かるはずです。
注意
持病がある人、しばらく運動していない人は、始める前に主治医に相談してください。
物忘れが急に増えた、日常生活に困るほど忘れる、というときは、運動だけで様子を見ずに医療機関に相談してください。
この記事は、医療の診断や治療の代わりにはなりません。
仕事がある50代は、1日のどこに運動を置くか
4週間の流れが分かっても、時間がなければ始まりません。
会社で働きながら運動を続けるには、1日のどこに置くかを先に決めておくのが近道です。
時間帯ごとに、向いている使い方を整理します。
朝:仕事の前に走ると、午前中の頭が軽くなる
本書の冒頭に出てくる高校も、授業の前に体育を置いていました。
仕事の前に20分動くのは、その考え方をそのまま大人に当てはめたものです。
朝のうちに運動を済ませると、あとで「今日は疲れたから」と言い訳する余地がなくなります。
昼休み:歩くだけでも、午後の集中が変わる
昼休みに着替えて走るのは、現実的ではありません。
その代わり、食後に10分から15分、少し早足で歩きます。
午後いちばんの会議や資料づくりの前に置くと、眠気の出方が違ってきます。
夜:走るなら、寝る2時間前までに
夜しか時間がない人は、夜でも構いません。
ただ、寝る直前に心拍数を上げると、寝つきが悪くなることがあります。
走ったあとに、覚えたいことに10分取り組んでから休む、という流れにすると、運動と学びがつながります。
休日:ロードバイクで長く、楽しく
平日は短いランやウォーキング、休日はロードバイクで長めに走る。
この組み合わせだと、無理なく運動の量を確保できます。
景色が変わるので、1時間、2時間と乗っていても飽きにくいのがロードバイクのよいところです。
続けるための小さな工夫
走る日と時間を、カレンダーに先に書いておく。
前の晩に、ウェアと靴を玄関に出しておく。
雨の日は、室内でスクワットや階段の上り下りに切り替える。
記録は「やった日に丸をつける」だけで十分。
Audible版で聴くなら、どの章から聴くか
Audible版は、井上智博さんの朗読で、合計13時間20分です。
全部を通して聴くのは大変なので、悩みに近い章から聴くのが近道です。
記憶力が気になる人が先に聴く3つ
第九章「加齢」(84分25秒):年齢と脳の変化、運動との関係
第十章「鍛錬」(69分22秒):ウォーキング、ジョギング、ランニングの具体策
第二章「学習」(62分26秒):運動が学びを助けるしくみ
時間がない人は、第十章の中の「ウォーキング」「ジョギング」「ランニング」の3つの節だけでも聴く価値があります。
3つで約18分半です。
朝のウォーキング1回で聴き終わります。
走りながら聴くと、内容より自分の息の音のほうが大きく聞こえます。
記憶力そのものを鍛える方法は、こちらの記事にまとめています。
記憶脳 感想:50代でも脳は変わる!樺沢紫苑が教える記憶力復活術
勉強のやり方を変えたい人はこちらです。
疲れが抜けない人は、食事から整える記事もあります。
体より頭が休まらない日は、歩き方を変えて休める方法もあります。
この本を読みながら、ロードバイクに半年乗らなかった時期のことをnoteに書きました。
運動をやめていた間に何が起きていたのかは、こちらで読めます。
書籍情報とAudible版
『脳を鍛えるには運動しかない! 最新科学でわかった脳細胞の増やし方』ジョン J. レイティ、エリック・ヘイガーマン
- 著者
- ジョン J. レイティ、エリック・ヘイガーマン
- 翻訳
- 野中香方子
- 出版社
- NHK出版(2009年)
- 版元ページ
- NHK出版の書籍ページ
- 形式
- Kindle版/単行本(360ページ)
- Audible版
- ナレーター:井上智博/約13時間20分
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耳で読みたい人はこちら
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Audible版は、執筆時点では聴き放題の対象と表示されていました。
対象作品は入れ替わるので、リンク先で確認してください。
価格も変わることがあるので、最新の情報はリンク先で確認してください。
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読む時間が取れない日は、耳で読む。
Audible は、本を読み上げてくれる聴き放題のサービスです。
通勤中でも、家事の途中でも、目を使わずに1冊を進められます。
はじめての方は無料体験があります。
合わなければ期間内に解約すれば料金はかかりません。
無料体験の期間と条件、対象作品はAmazonのページでご確認ください。
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よくある質問
Q. 物覚えが悪くなったのは、年齢のせいですか
年齢とともに記憶力が変わるのは自然なことです。
ただ本書は、運動によって脳の働きを支えられることを多くの研究で示しています。
年齢だけを理由にあきらめる必要はない、というのが本書の立場です。
Q. どのくらい運動すればいいですか
本書は、ほぼ毎日の有酸素運動を基本に勧めています。
久しぶりの人は、この記事の4週間の流れのように、歩くところから始めてください。
強さの目安は「会話はできるが、歌は歌えない」くらいです。
Q. ランニングとロードバイク、どちらがいいですか
続けられる方が正解です。
手軽さならランニング、判断やバランスも使いたいならロードバイクが向いています。
ひざに不安がある人は、衝撃の少ない自転車やウォーキングから始める手もあります。
Q. 運動するだけで、記憶力は戻りますか
運動だけでは足りません。
運動は覚えやすい状態をつくる役で、覚えるのはそのあとの自分です。
運動のあとに10分学ぶ、という組み合わせにしてください。
Q. 忙しい日や雨の日は、どうすればいいですか
ゼロにしないことを優先してください。
10分の早歩きや、室内でのスクワットでも、体を動かしたことになります。
完璧な1回より、小さな毎日のほうが続きます。
Q. Kindleやオーディオブックはありますか
Kindle版と単行本があります。
Audible版もあり、井上智博さんの朗読で約13時間20分です。
聴き放題の対象は入れ替わるので、リンク先で確認してください。
最後にまとめます。
まとめ:脳のアップデートは、靴を履くところから始まる
『脳を鍛えるには運動しかない!』を読んで、走ってきた理由をあらためて言葉にできた気がします。
物覚えが悪くなった50代へのまとめ
運動は、脳の肥料(BDNF)と気分の土台を整える。
ランニングは土台の底上げ、ロードバイクは動く脳トレ。
運動のあとに10分学ぶ。
覚えるのは自分。
集中力が続かない。
ストレスが溜まる。
物覚えが悪くなった。
そう感じた日は、机に向かって悩み続けるより、ランニングシューズを履くか、ロードバイクにまたがる。
本書が示しているのは、脳を変える入口が、意外なほど足元にあるということです。
ただし、走り終わってから何を覚えるつもりだったかを忘れないよう、出かける前にメモしておきましょう。
明日やる1つ
明日の朝、20分だけ早足で歩く。
戻ったら、覚えたいことに10分だけ取り組む。
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50代から始めるなら、どこから手をつけるか
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最後に釘を刺しておきます。
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運動と同じで、使い続けて初めて形になります。
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本記事は『脳を鍛えるには運動しかない! 最新科学でわかった脳細胞の増やし方』(ジョン J. レイティ、エリック・ヘイガーマン著/野中香方子訳/NHK出版)の内容、Audible版の章の題名と長さ、筆者の運動経験をもとにまとめたものです。
本書の文章の引用ではなく、筆者の言葉での要約と感想です。
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