医療機器営業で売れないときに見直す7つの基本|6か月ゼロだった記録

結論|売れない原因は、焦って一方通行になったこと
はじめに:天狗になっていた私の転落
先に結論を書きます。
営業は、売る人ではありません。
お客さんが面倒くさいと思っていることを、代わりに補うサポーターです。
泥臭いことを、コツコツやる。
これが、6か月売れなかったあとに分かったことです。
特別な才能の話ではありません。
とにかく喜んでもらう。
それが自分の営業の大黒柱です。

医薬品総合商社で優秀な営業成績を収めていた私は、
医療機器メーカーのテクノメディカ(検査機器・分析装置)へ自信満々で転職しました。
「自分ならどこへ行っても売れる」
そう信じ込んでいた、根拠のない自信がありました。
しかし、現実は想像以上に厳しいものでした。

試用期間6か月、受注はゼロだった
転職先で私を待っていたのは、成功ではなく「売れない日々」でした。
売れない日々の苦悩
- 試用期間6ヶ月間で受注ゼロ
- 支店長からの嫌味混じりの言葉と、間接的な退職勧告
- 事務の人にも軽く見られていたこと
- 「自分は本当に営業に向いているのか?」という自信喪失の日々
扱っていた検査機器は、1台50万円〜300万円の高額商品。
しかも、後発メーカーで市場での信用度も低く、採用実績も少ない。
知名度の低さという大きな壁を前に、私は完全に行き詰まっていました。

売れなかった原因は、営業が一方通行になっていたこと
先に、いちばん大事なところを書きます。
売れなかった原因は、商品でも知名度でもありませんでした。
営業が一方通行になっていたことです。
自分が売りたいものを、自分の都合で運んでいました。
相手が喜ぶことを、していませんでした。
なぜ一方通行になったのか。焦っていたからです
慢心していたから、という話ではありません。
試用期間で結果が出ていなかったからです。
早く1件ほしいという気持ちが、そのまま行動に出ました。
アポを取らずに訪問しました。
とにかく押し込もうとしました。
分からないことも、分かったふりで流しました。
どれも、相手のためではなく自分のための動きです。
焦るほど一方通行になり、一方通行だからさらに売れません。
この繰り返しの中にいました。
先輩と支店長からは、毎日のように詰められていました。
数字が無いので、言い返せません。
精神的な余裕は、ほとんど残っていませんでした。
余裕が無いと、相手の話を聞く時間が惜しくなります。
それがまた、一方通行を強めました。
売れないときは、目が見えなくなる
売れない時期は、盲目になります。
正しい判断ができません。
それまで成功してきたやり方を、自分の手で捨てていました。
営業先では空回りしました。
社内では、毎日のように詰められました。
いま振り返れば、指導の範囲を超えていたと思います。
バカにされることにも、だんだん慣れていきました。
何をしてもダメ出しばかりでした。
こうすればいい、という助言はありません。
ダメだという指摘だけが積み上がっていきます。
直し方が分からないまま、自信だけが減っていきました。
「いつまで続けるの」と聞かれた
言ってきたのは支店長です。
辞めろ、とは言いません。
代わりに、こう聞かれました。
いつまで、この仕事を続けるの。
直接ではありませんが、意味は分かります。
間接的に、辞職を促されていました。
言い返す材料は、自分にはありません。
数字が無いからです。
黙って聞くしかありませんでした。
そして数字は出ません。
出ないから、また焦ります。
この悪循環から、自分ひとりでは抜けられませんでした。
当時は新婚でした
焦っていた理由は、仕事だけではありません。
結婚したばかりでした。
生活を豊かにしなければいけない。
その気持ちが、毎日のしかかっていました。
だから辞めるという選択も、簡単には取れません。
逃げ場が無いまま、数字だけが出ない状態が続きました。
退職を覚悟しかけたのは、そこまで追い込まれていたからです。
いま同じ状況にいる人がいるとしたら、原因は能力ではなく、この循環のほうだと思います。
前職で売れていた理由を、言葉にしていなかった
医薬品の卸にいたころは、数字が出ていました。
なぜ出ていたのかを、当時は説明できませんでした。
いま振り返ると、やっていたことははっきりしています。
お客さんに感謝され、喜ばれていました。
だから信用されました。
迅速に、確実に、丁寧に対応していました。
そこにパッションを込めていました。
相手の話を傾聴し、悩みは何か、課題は何かを聞き取っていました。
そのうえで、ニーズに合うものを出していました。
一人で抱えず、人を巻き込んだ
自分ひとりで対応できないことも、当然ありました。
そのときは他力本願でした。
社内外の関係者を巻き込んで、答えを持っている人に入ってもらいました。
自分が答える必要はなく、答えが届けばいいからです。
気むずかしい相手ほど、時間をかけた
医療従事者には、気むずかしい方もいます。
心を動かすのに要ったのは、説明ではなく伴走でした。
問題が解決するまで、一緒に動きました。
時間をかけて、一つずつ前に進めました。
そうしているうちに、お客さんとの間合いが近くなりました。
信用と信頼は、そこで初めて生まれました。
仕事と関係のないことにも付き合いました。
その時間が、結果として仕事につながりました。
転職して、この全部を置いてきた
新しい会社では、この積み重ねをゼロから始める必要がありました。
ところが自分は、前職の成果だけを持ってきました。
やり方のほうは持ってきませんでした。
売れなかった6か月に起きていたのは、それだけのことです。
転機:課長から渡された一冊のビジネス本
退職を覚悟し始めた時、課長が一冊のビジネス本を手渡してくれました。
テーマはシンプルに「売れる営業とは」。
半ばすがるような気持ちでその本を熟読し、私はそこで衝撃的な事実に気づきます。

売れない原因を徹底分析
私が犯していた、致命的なミスは次のようなものでした。
やってはいけなかった3つの営業
- 顧客の都合を無視した「ノーアポ訪問」を繰り返す
- とにかく押し込もうとする「一方的な押しかけ営業」
- 分からないことをそのままにして「分かったふり」をする
これらは、前職で成果を出していた頃に大切にしていた「基本」とは真逆の行動でした。
成功体験に酔い、「自分流」に偏りすぎていたのです。

図1|やめた3つと、代わりに入れた3つ。左が売れなかったときのやり方。
脚下照顧:足元を見つめ直す
ここで私の心に刺さったのが、「脚下照顧(きゃっかしょうこ)」という禅語でした。
*少林寺拳法で学んだ教え
脚下(あしもと)を照らし、顧みる。
常に自分自身を見つめ、正しい行いを求めていくこと。
有頂天だった私は、「自分の足元をまったく見ていなかった」ことにやっと気づきました。
- なぜ売れないのかを、人や会社、商品、メーカーのせいにしていた
- 「自分の営業の基本」が崩れていることを認めようとしなかった
この言葉をきっかけに、私はもう一度「営業の基本」に立ち返ることを決意しました。

本に書いてあったのは、一文だけだった
ダメ出ししか返ってこない毎日の中で、例外がひとりだけいました。
課長です。
課長だけが、直し方につながるものをくれました。
それが一冊のビジネス本でした。
その本に、こう書かれていました。
お客さんに喜んでもらえる営業は、結果が出る。
特別なことは何も書いていません。
ただ、読んだ瞬間に前職のことが浮かびました。
喜んでもらうとは、具体的に何をすることか
医薬品の卸でやっていたこと
振り返ると、商品の話はあまりしていませんでした。
訪問先で、脱いである靴を揃えていました。
誰もやりたがらない、面倒なことです。
届いた郵便物を、必要な人の手元まで渡していました。
仕事とは関係のないグルメの情報を持っていきました。
誘われれば、一緒に食事にも行きました。
身の回りのことを、手伝っていました。
どれも商品とは関係のないことです。
けれども、これが信用になっていました。
医療機器メーカーでやり直したこと
扱うものが変わったので、まったく同じことはできません。
代わりに、現場が困っていることを引き受けました。
オンラインでつながるシステムの流れと運用を、図に描いて渡しました。
機器の選定理由書を、代わりに作りました。
現場の作業をどう効率化できるかを、提案の形にしました。
どれも、こちらの売り物の説明ではありません。
相手の仕事が軽くなることです。
土台は、お客さんを不快にさせないこと
ここまで書いたことの根っこにあるのは、お客さんを不快にさせない配慮です。
提案の質より前に、まずここです。
一度不快にさせてしまうと、そのあと何を説明しても届きません。
業種も商品も変わりましたが、そのために変えなかったことが3つあります。
明るく挨拶することです。
言葉を丁寧に使うことです。
そして、いつも機嫌よく対応することです。
ニコニコしている、というだけのことです。
技術でもテクニックでもありません。
誰でも、今日からできます。
ただし、余裕が無くなると、まずここから崩れます。
焦っているときほど、この3つは崩れやすくなります。
できない要望は、その場で断らない
頼まれたことが、全部できるわけではありません。
できることは、その場で対応します。
できないことは、すぐには断りません。
一度持ち帰って、考えます。
そのうえで間を空けてから、理由を述べて断ります。
即答で断ると、相手には「検討もされなかった」と伝わります。
間を空けるのは、時間を稼ぐためではありません。
実際に考えるためです。
断ったあとも関係が切れなかったのは、この手順のおかげだと考えています。
順番は、いつも同じだった
まず傾聴して、困りごとを聞き取ります。
次に、その困りごとを解決します。
高額な医療機器が売れたのは、そのあとです。
先に売ろうとしていた6か月は、一度も売れませんでした。
順番を変えただけです。
営業は、売る人ではなくサポーターだった
いまの自分の言い方をすると、営業はサポーターです。
お客さんが面倒くさいと思っていることを、代わりに補う人です。
靴を揃えるのも、選定理由書を作るのも、やっていることは同じです。
相手の手間を、こちらが引き受けているだけです。
そしてサポーターである前に、相手を不快にさせないことが土台になります。
華やかなテクニックではありません。
泥臭いことを、コツコツやる。
売れるようになるまでに、それ以外の近道はありませんでした。
試用期間6ヶ月目:初めての成約
基本に立ち返った営業スタイルを徹底した結果、
ついに試用期間ギリギリの6ヶ月目で、産婦人科開業医から50万円の分析装置を初受注することができました。
あの日の安堵と喜びは、今でも鮮明に覚えています。

実践した「売れる営業」の7つの基本
ここから7つの基本を書きます。
新しい話ではありません。
前半に書いたことを、訪問の順番に並べ直したものです。
1と2は、相手を不快にさせないための部分です。
3から5は、相手を知るための時間です。
6と7は、面倒を引き受けて次につなぐ部分です。
どれも、喜んでもらうための手順にすぎません。
図3|順番を変えただけだった。まず不快にさせない、つぎに面倒を引き受ける、そのあとに売れる。
図2|7つの基本は、前半に書いたことを訪問の順に並べ直したもの。
ここからは、当時の私が徹底して実践した7つの基本をご紹介します。
どれも特別なテクニックではなく、「当たり前だけど、つい疎かになりがちなこと」です。

1. アポイント取得の徹底
- ノーアポ訪問をやめ、必ず事前にアポイントを取る
- 「忙しい時間帯」「外来が混み合う時間」を避け、相手の負担を減らす
「今、お時間よろしいですか?」ではなく、
「◯日の◯時頃、10分だけお時間をいただけませんか?」と具体的にお願いするようにしました。

2. 細部への気配り
- 受付の方に、毎回きちんと挨拶をする
- スリッパや靴を揃えるなど、小さな所作を丁寧に行う
- コートは勝手にかけず、「ここに置いてもよろしいでしょうか?」と一言添える
こうした一見些細な行動の積み重ねが、信頼の土台になることを改めて実感しました。

3. 傾聴を最優先(8割は相手に話してもらう)
- 医療現場で困っていること、改善したいことを短く・分かりやすく質問する
- 自分が話すのは2割程度に抑え、8割は相手に話してもらう姿勢を徹底
「何を話すか」よりも、
「相手の話をどれだけ真剣に聴けるか」が営業の武器だと気づきました。

4. 分からないことは素直に質問する
- 医学用語や検査の専門用語で分からないことは、その場で素直に質問
- 知ったかぶりをせず、「勉強不足で恐縮ですが、教えていただけますか?」とお願いする
この姿勢が、逆に先生方や技師さんとの信頼関係を深めるきっかけになりました。

5. 相槌の技術を磨く
- 「そうなんですね」「それは大変でしたね」「その考え方はありませんでした」など、
相手の気持ちに寄り添う相槌を意識する - 声のトーンや抑揚をつけて、単なる「うなずき作業」にならないようにする
ただ聞くだけでなく、
「あなたの話をちゃんと受け止めています」というサインを出すことが大切です。

6. カスタマイズ提案を行う
- 画一的なカタログ説明ではなく、
医療機関ごとに図面・仕様・運用方法をカスタマイズした提案書を作成 - 先生や検査技師さんの導線、既存機器との組み合わせも含めて提案
「この病院のためだけに作った提案なんだ」と感じてもらえると、
価格以外の価値で選んでもらえるようになりました。

7. 次回アポイントを必ず確保する
- 訪問の最後に、次回の面談日時をその場で決める
- 「また伺います」ではなく、「◯◯の資料をお持ちしますので、来週の◯曜日はいかがでしょうか?」と具体的に提案
これにより、訪問が単発で終わらず、関係構築のサイクルが回り始めたのです。

その後の成功:営業成績が順調に向上
この「基本」を愚直に続けた結果、
少しずつ、しかし確実に受注件数と売上が伸びていきました。

継続して実践した成功法則
1. 信頼関係の構築
- お客様との距離を縮めるため、
服装・研究内容・趣味など、些細なことでもポジティブに褒める - 頼まれたこと・約束したことは、期日よりも早く対応する
「この人なら任せられる」と思っていただけるようになると、
紹介や追加案件の相談も自然と増えていきました。

2. 組織全体への働きかけ
- 医師だけでなく、臨床検査技師、看護師、事務長など、
関わる人全員とのコミュニケーションを大事にする - 導入のメリット・デメリットを包み隠さず伝え、
不安点は事前に一つずつつぶしていく
キーマンだけでなく、現場のスタッフ全員を味方につけることが、
高額機器の導入では特に重要だと学びました。

3. きめ細かいフォロー
- 定期的な訪問と情報提供(学会情報・新しい検査方法など)
- トラブルや不具合があった際は、スピード対応を最優先
- 導入後のサポート体制(点検・保守・使い方の再説明)を明確に伝える
「売って終わり」ではなく、
「導入してからが本当のスタート」だという意識に変わりました。

学んだこと:営業の本質とは
この転職と挫折、そこからの回復を通じて、私は営業の本質を学びました。
売れる営業の本質
- 相手目線で考える
自分の売りたい商品ではなく、顧客の課題解決を最優先にすること。 - 傾聴力が最大の武器
話す力よりも、聴く力が営業の成果を左右すること。 - 信頼の積み重ねがすべて
小さな約束を守り続けることで、
「最後はあなたから買いたい」と言ってもらえるようになること。 - 謙虚さを忘れない
分からないことは素直に認め、
教えてもらえる自分でいることが成長につながること。 - 基本の徹底こそ最強の戦略
派手なテクニックよりも、
当たり前のことを当たり前にやり続けることが、一番の近道であること。

転職で学んだ人生の教訓
どれだけ過去に実績があっても、
環境が変われば、そのやり方が通用しないことがあります。
しかし、
「相手を尊重し、話を聴き、約束を守る」という営業の基本は、どの業界でも普遍的です。
天狗になっていた私が、
脚下照顧:足元(原点)を見つめ直したことで、
営業成績だけでなく、人生そのものが少しずつ好転していきました。

大黒柱は、いまも変わっていない
課長がくれた本には、お客さんに喜んでもらえる営業は結果が出る、と書いてありました。
すがるような気持ちで読んだ一文です。
いまは、自分の言葉になっています。
とにかく喜んでもらうこと。
これが自分の営業の大黒柱です。
商品が変わっても、会社が変わっても、ここだけは動きませんでした。
売れない時期に足りなかったのは、能力ではありません。
この一本が抜けていただけです。
甲田さんのこと
本を渡してくれた課長は、甲田さんといいます。
同じ枚方市に住んでいました。
一緒にスポーツジムへ行きました。
ご飯をご馳走してもらいました。
悩みがあると言えば、一緒に動いてくれました。
上司として指導された記憶より、助けてもらった記憶のほうが多く残っています。
いま振り返ると、甲田さんがしてくれたことは、そのまま自分がお客さんにしていたことでした。
面倒なことを引き受ける。
仕事と関係のない時間にも付き合う。
営業のやり方を、言葉ではなく態度で見せてもらっていたのだと思います。
甲田さんは、すでに他界されました。
お礼を言う機会は、もうありません。
再起動させたのは、一冊の本だった
甲田さんと出会わなければ、そのあとの成績はありません。
いまの自分の営業のやり方は、あの時期に作られたものです。
そして、完成してはいません。
いまも工夫を足し、更新し続けています。
自分を再起動させたのは、一冊の本でした。
正確に言えば、その本を渡してくれた人でした。
まとめ:あなたも変われる
私の体験から、はっきりと言えることがあります。
売れない営業から売れる営業への転身は、誰にでも可能です。
もし今、営業成績が伸びずに悩んでいるのであれば
- 一度、自分の営業スタイルを見直してみませんか?
- 本当に、顧客目線で考えられていますか?
- 「当たり前の基本」を、どこかで疎かにしていませんか?
脚下照顧。
足元を照らし、自分自身を見つめ直すことから、すべては始まります。
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営業で結果を出すうえで、
「何を話すか」と同じくらい大事なのが「どう見せるか」だと痛感しました。
提案書やプレゼン資料の第一印象が変わるだけで、医療従事者の反応もガラッと変わります。
私はそこから、提案書・院内向け説明資料・学会用のスライドなどを
Adobeのツールで作るようにしました。
- カタログの抜粋+自社資料をきれいに1枚にまとめる
- 図やフローチャートを使って「導入後のイメージ」を見せる
- PDFで共有して、院内でも回覧してもらいやすくする
といったことが、テンプレートを使いながら直感的な操作だけで作れるので、
デザインのプロでなくても、営業として十分なクオリティの資料が作れます。
「自分の提案書やプレゼン資料を、もう一段レベルアップさせたい」と感じた方は、
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