50代にしておきたい17のことを要約|断る勇気と「先立つ後悔リスト」で人生後半を設計する
53歳で会社を辞めたとき、いちばん怖かったのは収入が途切れることではありませんでした。「このあと20年、何をして過ごすのか決まっていない」ことのほうが、はるかに怖かった。定年まで勤めるつもりでいると、その問いはずっと先送りにできてしまいます。
本田健さんの『50代にしておきたい17のこと』(大和書房・だいわ文庫)は、その先送りを止めにくる本です。刊行は2012年1月。著者自身がこれから50代を迎える立場で、すでに50代を通過した60代以上に取材して書いた、という成り立ちが最初に明かされます。
この記事では17項目を全部なぞるのではなく、自分が50代の当事者として読んで手を動かした5つの視点に絞って要約し、図解を添えます。解釈と体験談は筆者個人のものです。
この記事の結論
『50代にしておきたい17のこと』の芯は、「50代は、残りの人生で何を”やらないか”を決める最後の10年だ」という一点です。
40代編が可能性を広げる方向だったのに対し、50代編は絞る方向にはっきり舵を切っています。ひとつのことに10年かければプロの入口までは行ける。だが人生に残った10年単位の枠は、あと1つか2つしかない。だから断る勇気がいるし、後悔しそうなことを先に潰しておく必要がある——という組み立てです。

『50代にしておきたい17のこと』はどんな本か
本書は「17のこと」シリーズの5冊目です。10代・20代・30代・40代と続き、40代編の時点でシリーズ累計50万部、本書のあとがきの時点で80万部を超えたと書かれています。
前提として置かれているのは、50代の定義が一世代で変わってしまったという事実です。かつてサラリーマンの定年は55歳で、50代はもう老後の入口でした。それが今は50代で老後どころではない。だからこの年代の指針が更新されていない、というのが執筆動機として語られています。2012年の本ですが、この前提はむしろ今のほうが強まっています。
視点1:10年かけてやることを、1つか2つ決める
本書は冒頭近くで、けっこう具体的な数字を出してきます。何かに10年打ち込めば、プロとしてある程度できるレベルには誰でも到達できる。そして、50代からの人生でものにできるのは、あと1つか2つ。
この「1つか2つ」という上限提示が効きます。やりたいことが10個あるなら、8個は捨てる前提で選ばないといけない。目標は海外旅行に行くような単発のことではなく、腰を据えて取り組むものがいい、とも書かれています。
本書はこの絞り込みを助ける手法として消去法も勧めています。「これはもういい」と口に出して線を引いていく。南極に行くのを諦めると決めれば、そのために買った本やDVDだけでなく「時間がない・お金がない」という不満まで一緒に消える。この副次効果の指摘は、自分にはかなり実用的でした。
視点2:「できるか」ではなく「好きか」で決める
本書が「人生を変える魔法」として出してくるのが、判断軸の入れ替えです。何かが目の前に来たとき、できるかできないかを考えるのをやめて、好きか嫌いかで判断する。
これに付随して出てくるのが「心が軽くなるか、重くなるか」というセンサーです。同じ1日でも、やることによって心が軽くなったり重くなったりする。重くなることばかり続けていると、やがて体も心も反応しなくなる。50代は意識しないと重いほうが増えていく年代だ、という指摘でした。
ただし本書も、50代には社会的な立場があって全部を好き嫌いで決められないことは認めています。「できる範囲で」という但し書きは何度も出てきます。
視点3:断る勇気と、その代償としての罪悪感
本書のなかで、いちばんページを割いて掘り下げられているのが「断ること」です。しかも珍しいのは、断ると罪悪感が来ることを前提にしている点でした。
ここは本書がうまいと思ったところで、「罪悪感を感じずに上手に断る方法」を教えるのではなく、罪悪感という炎に焼かれながらも幸せを選べという言い方をします。逃げ道を用意しない。
そのうえで、断り方の技術も少しだけ出てきます。忙しいからと言うと角が立つので、自分の側の事情(人前に立つと緊張する、など)を理由にする。断るのに謝る必要はないはずなのに、あえて謝ることで相手も恐縮して丸く収まる。「ごめんなさいの達人になる」という表現が出てきますが、これは実際に使えます。
ここは人を選びます。断ることが推奨されるのは、あくまで自分の時間と健康を守るためです。介護や育児のように、断れないし断るべきでもない責任は当然あります。本書もそこまで踏み込んでは書いていないので、自分の状況に合わせて読み替える必要があります。
視点4:「先立つ後悔リスト」をつくる
本書のワークのなかで、自分がいちばん手を動かしたのがこれです。10年後、あるいは死ぬときに「やらなかった」と後悔しそうなことを、先回りしてリストにする。本書ではこれを「先立つ後悔リスト」と呼んでいます。

本書に出てくる実例は、結婚10年後に新婚旅行に行った夫婦、大学に入り直す、初恋の人に告白する、本を出す、個展を開く、といったものです。難易度はバラバラでいい。むしろ簡単に潰せるものが混ざっているほうがいい、というのが本書のスタンスです。
視点5:未完了の宿題を終わらせる
10年、人によっては20年、ずっと引っかかったままになっていること。果たせないままの約束、和解できていない関係。考えただけで心がモヤモヤするもの。本書はこれを「宿題」と呼んで、50代のうちに片づけろと言います。
本書がここを重く扱うのは、家族との軋轢が人生の別の場所でしこりになると考えているからです。家族と調和している人は社会に対しても安心でき、精神的に安定する。逆に家族とつながっていない人は言いようのない不安を抱え、誰のことも信用しきれない——という因果の説明が出てきます。
ここは根拠を示すタイプの記述ではないので、納得できるかは人によると思います。ただ、自分の実感としては近いものがありました。
50代の資産は、健康 → 時間 → お金の順
40代編でも健康と時間が資産だと書かれていましたが、50代編ではさらに踏み込みます。50代後半以降は、どれだけお金があるかより、痛いところがどこにもないことが最大の資産だと。
時間については、40代編と同じく「時間は命」という捉え方が出てきます。貯めることはできないが、お金を使って家事を外注する、不要なことをやめる、という形で作り出すことはできる。ただし50代で睡眠時間を削って時間を作るのは、命を削っているのと同じだと釘を刺しています。

あわせて本書が強く勧めているのが友人と趣味の準備です。60代になると仕事関係の知り合いはあっという間にいなくなる。友情は木を育てるように時間がかかるので、60代から始めたのでは遅い、と。趣味についても、60代以降は趣味が人生の中心になりうるので、そのときに「やることがない」と慌てないために今から仕込んでおけ、という順序です。
53歳の自分が実際にやったこと
1. 先立つ後悔リストを22個書いた
ノートに書き出したら22個になりました。そのうち11個は「今回の人生ではやらない」と決めて線を引きました。世界一周も、楽器も、田舎に家を建てるのも消しました。消したときに来たのは喪失感ではなく、意外なほどの身軽さでした。本書の言うとおり、諦めと一緒に「時間がない・お金がない」という不満まで消えたからだと思います。
残った11個のうち、いちばん上に来たのが「自分で稼ぐ手段をひとつ持つ」でした。これが結果的に、早期退職を選ぶときの支えになりました。
2. 10年かけるものを1つに決めた
自分が選んだのはAdobe(IllustratorとAfter Effects)でした。50代からデザインを一から学ぶのは、正直かなり効率が悪いです。若い人のほうが習得は速い。本書も、統計的には30代で独立するほうが成功しやすいとはっきり書いています。それでも選んだのは、営業で30年やってきた「説明する力」と組み合わせられるからでした。
実際にかかった費用や、無料体験から始める手順は50代からのAdobe副業ロードマップにまとめています。うまくいかなかったことも書いています。
3. 断る練習をした
これがいちばん難しかったです。最初の数回は、断ったあとに何日か引きずりました。本書の言う「罪悪感の炎」は実在します。ただ、3か月ほど続けると断ってもたいてい何も起きないことが分かってきます。相手も忘れています。自分だけが重く見積もっていました。
関連記事
40代編の要約は『40代にしておきたい17のこと』を要約にまとめました。似たテーマの書評としてまんがでわかる7つの習慣3の感想、人生は4つの「おつきあい」もあります。
読む前に知っておきたい注意点
| 注意点 | 中身 |
|---|---|
| 2012年刊行 | 年金・雇用・定年をめぐる制度は当時と変わっています。制度面の記述は参考程度に読むべきで、判断の軸として読むぶんには問題ありません。 |
| 著者が50代の当事者ではない | 執筆時点で著者はこれから50代を迎える立場でした。60代以上への取材で補われていますが、当事者の実感を求めると物足りない箇所があります。 |
| 情緒的・精神的な記述が多い | 愛、癒し、罪悪感、感情の扱いに多くのページが割かれます。数字や研究の裏づけを求めるタイプの読者には向きません。 |
| 40代編と内容が重なる | 健康と時間、お金、ノーと言うこと、ライフワークなどは両方に出てきます。2冊とも買うなら、重複は覚悟してください。 |
それから当然ですが、この本を読めば人生が好転する、という話ではありません。自分の場合は決断の材料が整理されただけです。実際に会社を辞めるかどうかは、本ではなく数字とタイミングで決めました。
よくある質問
Q. この記事で触れていない項目は何ですか?
故郷を訪ねる、昔の友人に連絡を取る、同窓会に出る、パートナーとの関係を作り直す、ロマンスとセクシャリティ、家族を癒す、20代の友人を持つ、本音で生きる、生きた証を残す——このあたりは本書のほうがずっと丁寧です。全部を書いてしまうと本を読む意味がなくなるので、意図的に絞っています。
Q. 40代編と50代編、どちらを買うべき?
50代の方は本書からで問題ありません。40代編は可能性を広げる方向、50代編は絞って決める方向にトーンが違います。40代編の要約はこちらの記事にまとめました。
Q. 60代が読んでも意味はありますか?
「50代のうちに」という前提で書かれているので、読後に軽い後悔は来ると思います。ただ、未完了の宿題を終わらせる話と、友人・趣味の準備の話は年齢に関係なく効きます。
Q. Kindleやオーディオブックはありますか?
だいわ文庫の紙版のほか、Kindle版とAudible版があります。執筆時点ではAudibleの聴き放題対象でしたが、対象作品は入れ替わるので購入前に商品ページで確認してください。自分は通勤中にAudibleで聴いて、先立つ後悔リストの章だけ文庫で読み直しました。
Q. 50代から新しいことを始めても遅くないですか?
本書は、若い人より不利であることをごまかしません。統計的には30代で独立するほうが成功しやすいとも書いています。そのうえで「現実を見据えながら自分の可能性に賭けろ」という書き方です。この率直さがあるから信用できる本だと自分は思っています。
まとめ
- 50代は、残りの人生で何をやらないかを決める最後の10年
- 10年かければプロの入口までは行ける。ただし枠はあと1つか2つ
- 判断軸を「できる・できない」から「好き・嫌い」に入れ替える
- 断ると罪悪感が来る。消そうとせず、耐えたうえで自分を優先する
- 先立つ後悔リストを書き、やらないものには線を引いて消す
- 未完了の宿題を片づける。相手が亡くなっていても手紙は書ける
- 資産の順は健康 → 時間 → お金。友人と趣味は60代からでは遅い
自分がこの本から受け取ったのは、励ましではなく締切の感覚でした。あと何回、10年の枠が残っているか。数えてしまうと、先送りが少しやりにくくなります。
書籍情報
- 書名
- 50代にしておきたい17のこと(だいわ文庫)
- 著者
- 本田 健
- 出版社
- 大和書房
- 発売日
- 2012年1月12日
- ページ数
- 184ページ
- ISBN
- 978-4-479-30366-4
- 形式
- 文庫 / Kindle版 / Audible版
価格は変動するため本文には記載していません。最新の価格・在庫・聴き放題対象かどうかは商品ページでご確認ください。
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耳で読む選択肢:Audible版もあります
自分はこの本を、最初にAudible(オーディオブック)で聴きました。17の項目がそれぞれ短く区切られている構成なので、通勤や散歩の細切れ時間と相性がいいタイプの本です。刺さった章だけあとから文庫で読み直す、という使い方をしています。
ひとつだけ先に知っておいたほうがいいのは、本シリーズのAudible版がデジタルボイス(合成音声)による朗読だという点です。プロのナレーターの抑揚を期待すると物足りません。内容を追うぶんには支障ありませんが、朗読の質を重視する方は試聴で確認してから決めるのが確実です。
執筆時点では聴き放題の対象で、会員なら追加料金なしで聴けました。対象作品は入れ替わるので、リンク先で「聴き放題対象」の表示があるかを必ず確認してください。
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40代編とあわせて読むと、広げる10年と絞る10年の違いがはっきりします。→ 『40代にしておきたい17のこと』の要約はこちら
【出典・免責】本記事は本田健『50代にしておきたい17のこと』(大和書房・だいわ文庫、2012年)を読んだ筆者が、内容を自分の言葉で要約・再構成したものです。原文の引き写しではなく、解釈・評価・体験談は筆者個人のものであり、著者および出版社の見解を代表するものではありません。本書の内容を網羅したものでもありませんので、詳細は原著をお読みください。
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